今日の知恵袋

シリア内戦について質問です。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11113305251

の回答書いてたら2000字制限超えたのでこっちに退避。

もう一つ質問があるのですが、ロシアは何の得があってシリアを支援してるしてるのですか?

という補足に対する回答というか分析。以下本文。




ロシアの利益ですが、大きく

1.シリアに持っている利権
2.あえてシリアを援助こと自体の利益がある

の二つがあります。

1は割と簡単で、ロシアはシリアにある基地使用権を持ってたりします。当然、利権維持のためにはアサド政権を存続させるしかありません。ロシアはもともと各地の独裁政権と仲良くする方針で外交を展開しており、それが「アラブの春」の政権で失敗した面もあり、最後の砦っぽくなったシリアを維持したいと思う気持ちはそれなりにあるでしょう。

あと、シリア軍が使っている武器を売っている、という要素も多少はあります。これも利権の一種と言えます。ただ、多くの人の誤解に反し、こちらは大した重みはありません。
冷戦期のソ連は武器輸出大国でしたが、現在のロシアでは兵器産業のウェイトも小さく、実際の輸出額も小さく(たしか全貿易額の1%かそこらだったはず)で、まあ、一応はお得意様であるのは確かですが、外交を大きく動かすほどの意義があるかと言えば疑問です。


2は異常にややこしいのですが、とりあえず、「ロシアはアメリカを困らせると利益になる」と思っておいてください。
そして、アサド政権が存続して反対派を弾圧し続ける限り、アメリカ政府としてはいろいろ困ったことになります。
先述のように、ロシアが受ける不利益はほとんどありませんから、その程度のメリットで十分割に合います。

もうひとつ、アサド政権が頑張って内戦が長引けば長引くほど、ロシアの立場が有利になる、という要素があります。
なんじゃそりゃという感じですが、ロシアは反政府軍はテロリストの集団でシリアをちゃんとまとめられるのはアサド政権だけだと繰り返し主張しています(アサド政権だってテロリスト使ってるしそもそも国民を直接虐殺している時点でまとめるもなにもあった物じゃないですが)。

 当然、内戦が続いてシリア国内と人心が荒廃すればするほど、戦後のシリアは混乱が大きくなり、結果として
「ほら見たことか! アサド政権を倒したらこのざまだよ! 我々の主張が正しかったことが証明された!」
と主張できることになります。ですので、このままアサド政権が存続してもロシアとしてはメリットがありますし、倒れるならなるべく国内を荒廃させてから倒れた方がいいですし、あるいは内戦後のボスニアのように国が事実上宗派別に分割されたりという展開も悪くないと言えます。
 その他、ロシア以外にもイランや北朝鮮や中国の思惑も考えるべきかもしれませんが、話が大きくなりすぎるので省きます