返事

 というわけでid:spacelabさんへの返事です。長いし完結してません。
 感想とか解説を延々と書いていたが、まず根本的なことを理解されてないのに気づいてしまった。結論から書くと、私(いつもは一人称を自分にしているけれども、間違いがあるといけないので、今回は私で統一する)とspacelabさんは別種の人間なので、議論の妥結点は存在しないと思う。はてなのキーワードをどうにかする、というのは行為であるから、妥協点を探ることはできるとは思うが。それでは本題に入る。(信条とかに関わりすぎる部分なので敬体で書けなかったが、ご容赦願いたい。「無用なイザコザを回避するためになるたけ敬語調で書きたいと思います」には全面的に賛成なので、後半は切り替える予定です)
 spacelabさんはどうやらパレスチナ問題でイスラエルが何をやっているか知っていれば、自動的に反発心を抱いて親パレスチナになる(もしくは反イスラエルになる)と考えているのではなかろうか。そして、私のスタンスはイスラエルの所行を知らないから生じていると思っているように読みとれたのだが、それでいいのだろうか?
 実際にはそうではない。私には、イスラエルが国家テロを行おうが、パレスチナ人がやむにやまれぬ動機から検問所を爆破しようが、「そんなのどうにもならない」と思っている部分(どの程度の大きさかははっきりしないが)が、確実にある。現在進行形の悲劇であるとは思う。だが、それに対して、私は、例えば恐怖政治時代のフランスやネロ統治下のローマやスターリン治下のソヴィエトとか、そのようなものに対するのと同じような感情しか抱けない。私が世界帝国アメリカの市民だった場合に何か違う感情を持つのか、そのあたりは分からないが。とにかく、「パレスチナ側のメディアを読めばわかるはずだ。圧倒的な武力を持ったイスラエル軍の行いを」とか言われても困惑するだけである。私はパレスチナで行われているすべての出来事を知っているわけではない。だがおそらく、spacelabさんが想像しているよりもいろいろなことは知っているし、たぶん(かつより重要なこととして)イスラエルスターリン級の蛮行(着の身着のままで民族ごと貨物列車に詰め込んで中央アジア送りにするとか、指導層を何百人かまとめて射殺してカチンの森に埋めるとか)でもやってない限り、今の見方はまったく変化しない。
 そういうわけで、私のこの種の事柄に対する見方は非常に冷酷なものだと自己分析している。ショッピングセンターで爆弾を爆発させたパレスチナ人をフェダイーンと呼ぼうがテロリストと呼ぼうが義士と呼ぼうが、事実には何の違いもない。そして、それがやむにやまれぬ動機から出ていようが家族への報奨金目当てだろうが騙されただけだろうがなんだろうが、結果として行われるのはイスラエル軍の報復攻撃という名の国家テロだけである*1
 パレスチナ人が自爆攻撃を行った場合、結果として得をするのは和平交渉に反対する勢力だけである。この意味で言えば危機を煽ることで利益を得る点でイスラエル右派とパレスチナ過激派の利害はまったく一致している(彼らの間につながりがあろうとなかろうと、この意味では大した違いはない)。仮に私にこの問題の当事者に対して憎悪のような感情を抱いている部分があるとすれば、その対象は、それら瀬戸際的な政策によって、自らの政治的な利益のためにパレスチナ人とイスラエル人とを犠牲にしているグループに対してであって、いわゆる「テロ実行犯」とか「パレスチナ人の家を戦車で破壊するイスラエル兵」とかに対してではない。

 以上です。「こんな相手とは議論できない」と言われるのであれば、それはそれでしょうがないことだとは思います(こんな思考形態の人間が一杯いる世の中とかは、私自身にとっても恐ろしいと思われます、掛け値なしに)。以降は敬体で書いていきます。一応、一番誤解されていると思う部分について、補足説明しておきます。

# cider_kondo 『(引用による中略)。無論、「明日にでも解決できる」と主張する理想主義者に向かって「複雑だ」と発言する場合には違った意味が存在するとは思いますが、いずれにせよ、この問題に必要なのは「イスラエルを滅ぼせばいい」とか「パレスチナなど存在しない」とかそういう主張ではないと思います。』

 の意味は「この問題に必要なのは(両陣営の過激派が唱えているような)極端な反イスラエル的な主張でも反パレスチナ的な主張でもない」ということだけです。spacelabさんが特にそういう主張をしているから改めろ、というものではありません。
 ですが、例えば、
「しかし私はユダヤパレスチナという形で単純化してしまうのだった(もちろんそれに抗うように書くことを心がけているが)。それより何よりパレスチナ人を感情移入が可能な他者、善意の他者としてみてしまうことだ。」
 とか、元々のイスラエルの項に書かれていたことが「私は複雑なものを複雑なものとして描こうとしただけだ。」と言われてもそうは思えないのは事実です。「中立が存在しないのならばすべてを並列に列挙すべきである」には同意します。ですが、かつてのイスラエルの項目に書かれていたことが「すべてを列挙すること」にほど遠いと思うのですが、いかがでしょうか? 「それに抗うように書くことを心がけているが」と言われても、私の目には強すぎる反イスラエル感情として写っただけです(イスラエルに対して感情的になるなとは言いませんが、すくなくともはてなの項目を書くのに適切な態度だとは思えなかったのです)。
 ・・・まとまらないので、続きはまた後日。

*1:5倍返し、10倍返しがイスラエルの国是なのは考えるまでもない事実である。それを「間違っている」というのは簡単だが、弱みを見せたら中東ではおしまいだと考えている人間がイスラエルその他には山ほどいるし、少なくともその政策を続けてきたから現在イスラエルは存続しているのだ、というのが、大ざっぱに言って、イスラエル右派の基本的な思想である。「イスラエルの生存」という題目には、多くのイスラエル人の思考を停止させる恐るべき魔力がある